タイル浮きの調査方法|タイルが浮く原因や調査基準、費用相場を解説

タイル浮きの調査方法

外壁がタイルの建物の場合、外壁仕上げ面の経年劣化などの影響でタイルが剥がれてしまうと歩道を歩いている人に被害を及ぼすといった危険性があります。敷地内で済む問題ならまだしも、一般の道路へ影響を及ぼす危険性があるため、タイル浮きの検査を伴う外壁調査を実施する事が義務付けられております。(建築基準法第12条 特定建築物定期調査)

当ページではタイル浮きの調査方法と費用相場について解説します。現在すでにタイルの損傷劣化が心配な方や、修繕を前に外壁調査を検討している方はぜひ参考にしてください。

外壁がタイルの場合の施工方法

外壁がタイルの場合

外壁がタイルの場合、施工方法は『湿式工法』と『乾式工法』と大きく2つにわけることができます。(PC先付け工法ではなく、現場での施工を想定しております)

【外壁がタイルの場合の施工方法】

  • 湿式工法

    仕上げ材の下地材としてコンクリート、プレキャストコンクリートパネル(PC版)、ALCパネルなどにモルタル又は接着剤等で貼り付けられたタイル、石貼り等及び現場、工場でコンクリートなどと同時に打ち込まれたもの。

  • 乾式工法

    タイル割りに合わせて躯体に取り付けられた下地金物にタイルを引っかけて仕上げたものを対象としている。

湿式工法は乾式工法よりも以前からある施工方法で、職人が1枚ずつ貼り付けていく工法があります。(PC先付け工法は除く)貼り付け方様々で、タイルの仕上がり・耐久性は職人の腕に大きく左右される特徴があります。

一方、乾式工法はタイルを金物に引っかける施工方法です。湿式工法のように職人の腕に左右されにくいので、安定した品質でタイル仕上げが施工されます。

外壁のタイルが浮く原因

外壁のタイルが浮く原因

外壁のタイルが浮いてしまうのは、経年劣化はもちろんのこと様々な原因があります。原因を押さえることで改修方法等の資料作成に活かせるので、タイル浮きにはどんな原因が考えられるのか知っておくことは重要と言えます。

【外壁のタイルが浮く主な原因】

  • 経年劣化

    年数が経つごとにコンクリートやタイルが劣化して付着力が低下して浮いてしまう

  • 温度差

    日々の温度変化で膨張と収縮を繰り返すことで付着力が低下して浮いてしまう

  • 湿度差

    タイル目地などからの吸水によって膨張と収縮を繰り返すことで付着力が低下して浮いてしまう

  • 地震などの外的要因

    地震などの外的要因により建物が変形することで付着力が低下して浮いてしまう

  • 凍結と融解

    ひび割れ部分から入った水分が凍結と融解を繰り返すことで付着力が低下して浮いてしまう

  • 鉄筋の被り厚さ

    鉄筋からコンクリート表面までの厚さが足りないことで鉄筋に錆が発生して膨張してしまい、表面の層を押し上げてタイルを浮かせてしまう

タイル浮きの調査を行う重要性

タイル浮きの調査を行う重要性

タイル浮きの確認は、赤外線調査・目視調査・打診調査等の方法にて注意深く調査をします。

タイル浮きの調査をすることで外壁の不具合を掴むことができ、建物の管理・維持が適切に行えるので重要な調査の一つとして考えられています。また、タイル浮き調査はタイルの剥落による人身事故や物損事故を防止することができるので、入居者や歩行者へ危害を加えないためにも重要な調査となります。

またタイルの浮き・剥離は建物の外壁、躯体に生じる様々な劣化を予期するもので、建物のロングライフ化といった視点からもタイルの調査は定期的に調査することをおすすめします。

タイル浮きの調査の基準

タイル浮きの調査の基準

外壁のタイル浮きの調査には法定基準が定められており、その基準に基づいて調査することで信用性が生まれます。タイルの調査を含む外壁調査は、平成20年に実施された建築基準法の改正以降で調査が義務付けられ、タイル仕上げの建物は10年ごとに全面打診等調査をしなくてはいけなくなりました。

タイル浮きを調査する際の基準の目安として『浮き率』があります。浮き率とはタイル全体のうちどのくらいの比率のタイルが浮いてしまっているか(一部或いは全面が下地に接着していない状態)を割合化したものです。築年数×0.6%がタイル浮き率の目安で、築10年の建物であれば6%を超えてきてしまうと経年劣化以外の理由となる疑いも出てきます。

タイル浮きの調査方法

タイル浮きの調査方法

外壁のタイル浮きの調査方法は主に『打診調査法』と『赤外線調査法』の2つがあります。近年、ドローンを使った調査方法も実証段階にありますが、それは赤外線調査法と調査方法が同じです。打診調査法と赤外線調査法は国土交通省が発表した「剥落による災害防止のためのタイル外壁、モルタル塗り外壁診断指針」で規定されている方法です。

上記の2つ以外にも外観目視法と反発法がありますが、これらの調査方法については打診調査法と併用します。打診調査法の場合は足場やゴンドラを設置しなければいけないのですが、赤外線調査法の場合はその必要がないのでコストを下げられるメリットがあります。

*赤外線調査法を実施したとしても地上より手の届く範囲については打診調査を行って確認をします

打診調査法

打診調査法とは打診棒や打診用のパールハンマー等でタイルの一枚一枚を叩いて、その際に発する音や感触の違いでタイルの浮きや不具合を特定する調査方法です。打診調査法は赤外線調査法よりも信頼性が高いことから、赤外線調査法で見つかった不具合を確認するために併用して打診調査法を用いたりもします。

打診調査法は足場や高所作業車を用意して作業するので比較的コストがかかりやすい方法でもあります。ですが、建物によってはロープアクセス工法という方法を使って足場を使用せずに調査することもできたりします。ロープアクセス工法とは、建物の屋上の丸環や強固なコンクリートの架台からロープを吊るして、検査員が降下しながら外壁を打診調査する方法です。

赤外線調査法

赤外線調査法はサーモグラフィを使用して外壁を撮影することで、外壁仕上げ材に浮いている部分が無いかを調査する方法です。建物から放射される赤外線エネルギーを感知して、それを電気信号に変換し熱分布画像で表示して調査をします。赤外線エネルギーは熱エネルギーと比例して変化していく特性があるので、熱分布画像に表れる温度差を確認して異常個所(浮き)が無いかを確認します。

従来は打診棒などで壁面を打診して調査する打診調査が一般的でしたが、赤外線調査なら打診調査と比べてコスト・安全面においてメリットが大きいこともあり特定建築物定期調査に於いての外壁全面打診等調査方法としては主流となってきています。とはいえ、打診調査法の調査精度はいまだ赤外線調査法に比べて高いので、赤外線調査法と合わせて打診調査法も手の届く範囲は実施をさせて頂きます。

タイル浮きの調査方法を選ぶポイント

タイル浮きの調査方法を選ぶポイント

タイル浮きの調査方法は種類がいくつかあり、建物の立地状況や依頼者様の要望などに合わせて選択します。以下の表は調査方法を選択する際に意識すべき、4つの項目を調査方法ごとにまとめたものです。

料金 正確性 スピード 足場不要
打診調査法 × ×
赤外線調査法

【料金】

打診調査法の中でもロープアクセス工法でしたら費用を抑える事は可能ですが、打診調査法は赤外線調査法に比べて料金が高くなりやすいです。赤外線調査法であれば、地上からの撮影環境が悪い等でもドローンを活用する方法もあり作業に対しての人員を最低限で済ませることができますが、足場等からの打診調査法ではそれができません。

【正確性】

外観目視調査法や打診調査法はタイルを叩いて音を確認したり、目視で確認したりするので、正確性が高いです。一方で赤外線調査法は壁(タイル)からの熱エネルギーを電気信号に変換し熱分布画像で表示し、温度差を見ることで異常箇所(浮き)を判別することから、浮き以外の影響で温度変化が生じることもあり、精度の点で打診法に劣ってしまいます。

もちろん、条件が整う日しか調査を実施しませんが、整った日でも赤外線調査法と合わせて打診調査法も併用することで信頼性を高めます。

【スピード】

赤外線調査法は赤外線カメラを用意して外壁面の撮影を行っていく為、作業効率が良く、大抵の建物は1日で調査が完了します。(同時に地上より打診法と目視法も行います)打診調査法の場合はタイルを1枚1枚叩いたり転がしたり、また目視をする時間が必要になって赤外線調査法よりも時間がかかります。

【足場不要】

赤外線調査法はカメラとそれに付随する機材があれば調査ができるので、高層建物であっても足場は必要ありません。外観目視調査法と打診調査法の場合は、高所を調査するのに足場がないと調査できないので必要になってきます。しかし、打診法の中でもロープアクセス工法という、屋上からロープを吊るして検査をする調査方法をする場合に限り、足場は必要ありません。

外壁のタイル浮き調査の費用相場

外壁のタイル浮き調査の費用相場

タイル浮きの調査費用は基本料金や人件費が業者ごとに差があるものの、面積あたりの相場は概ねどこの企業でも同じです。以下の表は1㎡あたりの調査費用をまとめたものです。

費用相場
ロープ打診調査法 1㎡あたり約240~450円
赤外線調査法 1㎡あたり約120~350円

赤外線調査法の費用が比較的低いのは、足場などが必要なく現場での手間がかからないからです。また赤外線調査は併用して外観目視調査も行い、高所などは双眼鏡や超望遠光学レンズのカメラを使って調査可能であることから打診調査法ほどの費用がかかりません。

もっとも費用がかかるのは打診調査法で、『叩く作業』が目視や赤外線による撮影よりも時間を要するので費用が高くなってしまいます。打診調査法の中でもロープアクセス工法は費用を抑える事が可能となります。

タイル浮き調査なら日本耐震診断協会

日本耐震診断協会

タイル浮きの調査依頼を検討しているのであればぜひ日本耐震診断協会へご相談ください。日本耐震診断協会は建物の耐震診断を実施している専門機関ですが、外壁全面打診等調査も積極的に引き受けています。『マンションの外壁タイルの赤外線調査』も数多く実績としてありますので安心してご依頼ください。

まとめ

外壁がタイルやモルタルの場合、経年劣化や付着力の低下により浮きや剥離したりする恐れがあります。タイルの浮き(剥離)が大きくなってくるとタイルが剥落する可能性も大きくなり、剥落したタイルが通行人に当たるような大惨事に繋がりかねません。そういった事態を避けるために、『打診調査法』や『赤外線調査法』という方法を使ってタイル浮きの調査を実施させて頂いております。

外壁タイルの浮きを調査する際の方法は建物の立地や形状、依頼者様の希望によって変わってきます。調査方法を決める際のポイントとして、目的に会った調査方法と費用の違いを把握してどの調査方法にするのかご判断いただければと思います。
お気軽にお問合せください。

タイル浮き調査のご用命は日本耐震診断協会へ

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