「過去の震災に耐えた家」だけでは安心できない
宮城県沖地震や東日本大震災を始めとして、今まで何度も大きな地震を経験してきた宮城県。
しかしこの宮城県ではここ数年で耐震診断を受ける住宅の数が減少しています。
そこにはどんな理由があるのでしょうか?
【宮城県で起こる地震の頻度】
宮城県では1978年にマグニチュード7.4の宮城県沖地震が発生しました。
東日本大震災以前に算出された地震の平均発生間隔は37.1年、そのため今年は東日本大震災を除くと宮城県沖地震からちょうど37年となります。
このような背景もあり、現在宮城県では住民に耐震化を呼びかけています。
【宮城県内の耐震化推進状況】
宮城県沖地震の発生により耐震基準が見直され、1981年に新耐震基準が定められました。
その後2000年には木造住宅では筋交いの接合部の規定を追加するなど、耐震基準の内容は強化されています。
現在県内にある住宅の総戸数に対し、新基準を満たしていると判断された住宅は約80%、加えて耐震性が不明の古い住宅でも「新基準以上の強度がある」と推計されているものが約5%あり、そのため全体で85%が耐震化基準を満たしていると推計されています。
そして残りの15%が「耐震性なし」と推計されているわけですが、この15%のうちの約9割が木造住宅という現状です。
このような調査結果から、宮城県は平成27年度末までに耐震化率を90%にするという目標を掲げていて、木造住宅の耐震診断や耐震改修工事の助成を行っています。
しかしここに来て耐震診断を受ける住宅数が減少しており、これが大きな問題となっています。
【なぜ耐震診断の依頼数が減少しているのか?】
宮城県がここ数年の間に行った耐震改修への助成件数は、東日本大震災直後の2012年度が前年度増の339件、しかし2014年度にはちょうど100件と年々減少しつつあります。
そのため現在は耐震診断を行う人も減っているわけなのですが、なぜそのようなことになってしまっているのでしょうか。
第1の理由として「今までの大地震に建物が耐えられたから大丈夫」という安心感が挙げられます。
しかしこれまでの地震で家の見えない部分が損傷している可能性もあるため、次の地震で倒壊しないとは言い切れません。
地震の揺れ方はその時々によって変わるので、前回の地震では大丈夫だったとしても次は倒壊するかもしれないのです。
次に「建物の所有者が高齢化している」という理由が挙げられます。
高齢者は築年数の長い住宅に住んでいるにも拘らず改修工事への意欲が低く、さらに地震が発生しても素早く避難することができません。
そのため高齢者にも建物の耐震化への意識を高めてもらう必要があるのですが、なかなか思うようにはいっていないようです。
またこれまでの大地震で建物に被害を受け、その箇所を補修する工事をしている場合は「費用面で耐震診断ができない」という問題があります。
とりあえず住宅を住める状態に戻すことを優先して費用を回しているため、耐震診断まで費用が回せない家庭がとても多くなっているのです。
【自分の家は自分で守ろう】
宮城県ではさまざまな理由により、耐震診断を受けられない家庭がたくさんあるということが分かって頂けたと思います。
しかし「今までの震災では大丈夫だった」という理由で安心するのは危険なことです。
家は時間の経過とともに老朽化していきますし、将来東日本大震災以上の大きな地震が来る可能性もあります。
「自分の家が新耐震基準を満たしているか」など、住宅に関して気になる点がある場合は安心を得る為にも耐震診断を受けることをお勧めします。
自治体の中には耐震診断に補助金を出している所もあるため、これを利用すれば費用も抑えることもできます。