外壁調査とは
外壁調査とは、ビルや建物の外壁に亀裂や塗装の剥がれなどの問題がないかを調べる調査のことです。新築の時には塗装もきれいですが、経年劣化によって塗装が剥がれたり外壁にひびが入ったりします。
外壁塗装の耐用年数は、約8年〜約10年と言われていますが、日照時間の長い地域など、環境によっては早く不具合が発生する可能性もあります。
湿式工法で施工された建物の外壁材(タイルやモルタル)は、時間が経つと劣化が進行します。この劣化の主な原因は、雨水などによる外壁への水分侵入や、日々や季節ごとの温度差です。朝と昼、または夏と冬の温度差により、建物の躯体(コンクリートなど)と外壁材の間に徐々に隙間(空気層)が生じることがあります。
そしてその空気層の厚さは時間の経過と共に大きくなってきます。この空気層ができることを外壁が浮く(剥離する)といいます。
剥離程度が小さいうちは外壁材はまだ躯体に付いていますが、剥離程度が大きくなってくると外壁材は落下の危険性が大きくなってきます。そのため建物の所有者は外壁材がしっかりと躯体に密着しているかそうでないかを外壁調査を行って調べる必要があります。
外壁調査の種類
外壁(タイルやモルタル)の劣化を調査する方法は、接触法と非接触法の二つに大別できます。接触法では、打診棒を使って外壁を叩き、劣化の状況を調べる打診法が主流です。
一方、非接触法では、赤外線カメラを用いて外壁の状態を調査する赤外線法が行われます。
外壁打診調査
作業員が専用の道具である打診棒を用いて直接外壁を叩き、劣化や損傷の有無を確認する方法です。打診棒を使って叩くことで生じる音(打診音)を聞き分けることで、外壁のタイルやモルタルが浮いていないかを判断します。
一般的には仮設足場や高所作業車を使用する方法があります。また、屋上からロープを使って降下しながら調査を行うロープアクセス打診もあります。このロープアクセス工法は、小規模な外壁補修工事にも適用可能です。
足場を組み立ててから建物の外壁を打診する方法は、作業員が外壁に近づき、目視と触診を同時に行うことが可能なため、作業現場で頻繁に用いられます。
足場の組み立てによる打診法の最大の利点はその精度です。時間や手間、費用がかかるものの、非常に正確な結果を得られます。特に、建物が古くて打診を確実に行いたい場合や、目視と触診調査を詳細に行って修繕が必要な場所を特定したい場合に適しています。
また、作業員が外壁に近く作業できるため、悪い箇所にマーキングを施すことが可能です。これにより、他の作業員もそのマーキングを見て、どの部分が問題なのかを容易に理解できます。
ただし、足場を組むためには時間と人員が必要となり、作業が完了するまでに時間がかかるというデメリットもあります。壁の老朽化が目視で確認できる、壁にひび割れや剥がれが見られる、見た目に状態が悪い建物などに対する調査が特に有効です。
ロープアクセス工法による外壁調査は、建物の屋上の丸環や強固なコンクリートの架台に安全ロープ(メインロープ・ライフラインの2本)を固定し、そのロープを建物の下に吊るして検査員が降下しながら外壁を打診棒により打診をして外壁調査を行うと言う手法です。
ビルの外壁補修や特定建築物定期調査の外壁全面打診等調査に対応しています。
外壁ロープ打診調査は・・・
- 仮設足場などの設置を必要としないため、費用を大きく削減することが可能です。
- 特定建築物定期報告での外壁全面打診等調査や
外壁の補修目的の外壁点検に対応しています。 - 外壁調査後のタイルの補修工事にもロープアクセス工法は対応しており、
外壁タイルやモルタルの補修及びシールの打ち替えを低料金で行えます。 - 日本耐震診断協会は全国に出張調査(点検)を致しております。
ロープ打診調査は、一般的によく用いられる点検方法で、足場を組む必要がないため、コストがかかる打診法の中では比較的リーズナブルな選択肢となります。
作業員がロープに吊り下げられて作業を行うため、小規模から中規模の建物に特に適しています。ただし、屋上にロープを固定できるポールや支持体がない場合、この方法を用いることはできません。そのため、実際に作業を開始する前に現地の状況を調査することが必要となります。
定期的な外壁調査は法律で定められており、マンションなどのオーナーには定期報告制度が義務付けされています。不動産を良い状態で維持する上で、外壁点検は重要であり、不具合を早期発見できれば修復や小規模な工事で費用を抑えられるでしょう。
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外壁赤外線調査
外壁赤外線調査とは、赤外線カメラを使用してひび割れや浮きを撮影し、解析する方法です。何らかの異常がある場所は表面温度に差異が生じるため、問題の有無を判別しやすくなります。
赤外線調査の大きな利点は、広範囲を一度に調査できるためコストパフォーマンスが良い点です。打診調査と比較すると、費用が少なく抑えられます。
ただし、温度差を利用するため、作業日は天候が良いことが前提となります。また、目視ではないため、細かな浮きを見つけるのが難しいというデメリットもあります。
建物の状態によっては、目視や打診調査と組み合わせて外壁点検を行うこともあります。安全性とコストのバランスを考慮すると、外壁ロープ打診点検よりも赤外線カメラやドローン調査が利用されることが多いでしょう。
外壁調査の必要性
外壁調査は、建物の外観を美しく保つだけでなく、建物の保護能力を維持し、災害などから守るためにも重要です。
建物の外観が劣化するのは避けられないことであり、普段からその状態を注視する人は少ないため、外壁調査の必要性に疑問を持つ方もいるかもしれません。
また、外壁調査には費用がかかるため、外壁に明らかな問題が発生してから調査を行う人もいます。しかし、安全性を考慮すると、そのような対応はお勧めできません。
ここでは、外壁点検の必要性について、4つの観点から説明します。
建築基準法に定められている
平成20年に行われた法改正により、「建築基準法第12条に基づく定期報告制度」の外壁点検開始時期については以下のように義務化されています。
- 特定建築物定期調査により異常が認められたもの
- 竣工後10年を超えるもの
- 外壁改修後10年を超えるもの
- 外壁の全面打診等調査の実施後10年を超えるもの
この法令によって、目視及び部分打診調査は8年〜10年ごと・全面打診等調査は10年ごとに行い調査結果を報告しなければいけません。
建築基準法第101条では、「適切なタイミングで外壁調査を行わなかった場合、100万円以下の罰金に処する」と表記されています。
事故のリスクを下げる
外壁の落下事故は、全国で過去に何度も起こっており、通行人がケガをする事故の実例もあります。
大きなビルやマンションの外壁が剥離していても、素人目にはほとんどわかりません。点検を怠ったことで、外壁が崩れ落ちたところに人がいれば大事故になります。
外壁の経年劣化を放置して整備しないのは、法律違反だけでなく、人の命を奪いかねない危険な行為です。
取り返しのつかない事故になる前に、外壁を点検して安全な状態にしておくことが重要になります。
建物の見栄えが良くなる
外壁にひびが入っていたり、剥がれがあるような建物は見栄えが良くありません。
築年数が短くても、何らかのトラブルで外壁が剝がれてしまうと、古く見えてしまい不動産価値が下がります。
定期的な外壁点検を行うことで、トラブルが起きている箇所にいち早く気づくことが可能です。外観を修理すれば、利用者の安心と信頼を得られますし、事故を起こす心配もなくなるでしょう。
早めに補修し劣化を食い止めれば、建物の見栄えを良くするだけでなく、不動産価値を高められます。
災害時における安全性の確保
地震や津波などの大規模災害が発生した際に、避難所として利用できるくらいに安全性を高めておきましょう。
外壁点検を怠ってしまうと、大きな地震で建物全体が揺れ、落下物が人を襲い、犠牲を生むこともあります。定期的な点検で外壁を調査しておけば、災害時の被害を最小限にでき、安全を確保することが可能です。
外壁ロープ打診調査のメリット
ロープアクセス工法による外壁打診調査は赤外線カメラによる外壁調査よりコストは高くなりますが、調査の正確性は高くなります。
タイルやモルタルの浮きを調査していくのと同時に、目視にてひび割れや欠損などの劣化状況の調査も行います。またタイル間や窓枠のシーリングの老朽化や損傷度合の調査も可能です。さらにロープアクセス工法は外壁タイルの補修工事にも対応しており、仮設足場や高所作業車を使わない方法ですので、外壁タイルやモルタルの補修及び窓枠などのシール補修工事費用が大幅に削減できます。
ロープアクセス工法による外壁の打診調査は、仮設足場や高所作業車を使用する外壁調査に比べ、仮設足場の設置や高所作業車やオペレーターの配置の必要性がないため、外壁調査のコスト(費用)の大幅な削減が可能になります。また高所作業車ですと建物の周囲に大きな駐車スペースが必要になりますが、ロープアクセス工法なら敷地のスペースを心配する必要は有りません。
赤外線法は、現地での撮影は晴天日にしか出来ませんが、ロープアクセス工法による打診調査は雨の日以外なら現地調査は可能なため、日程の調整に比較的融通が利きます。
外壁ロープ打診調査は、作業員が打診棒で直接外壁を打診し、主にその時の打診音(打音)を聞き分けて、外壁のタイルやモルタルが浮いているか否かの判断をする手法のため、比較較的高い精度でタイルやモルタルの浮いている箇所の判別が可能です。以上の理由から打診棒を使用しての打診調査は、外壁の補修工事のための調査に向いていると言えます。
外壁ロープ打診点検とは
外壁ロープ打診検査とは、作業員がロープを使って降下しながら外壁の打診調査を行う方法です。これはロープアクセスとも呼ばれ、レスキュー隊が使用する特殊な技術を活用しているため、安全性が高いという特徴があります。
この方法は中小規模の建物の打診調査に適しています。屋上の丸環などに安全ロープを固定し、安全確認を行った後、ゆっくりと降下します。その際、打診棒を使って外壁を叩き、壁の亀裂や塗装の剥がれがないかを目視で確認します。
ドローン調査では見落としがちな細かな亀裂や外壁の剥がれも、この方法であれば発見することが可能です。
コストが削減できる
検査に使用する道具はロープと打診棒というシンプルなものだけなので、仮設足場の設置や高所作業車の配置は必要ありません。大規模な作業のための足場組立などの事前準備が不要で、コンパクトに作業を開始できるため、人件費を大幅に削減することが可能です。
敷地が狭く駐車スペースがない場合でも、外壁ロープ打診検査ならば敷地のスペースを気にする必要はありません。高所作業車や足場が設置できないような現場でも、点検が可能です。また、ドローンなどの最新機器を導入しなくても、確実な点検を行うことができます。
日程調整に融通が利く
外壁ロープ打診検査は、基本的に雨天以外の日なら作業が可能なため、作業計画を立てやすいというメリットがあります。雨が多い季節を除けば、点検スケジュールを容易に組むことができ、不動産の所有者の都合に合わせて調査を進めることが可能です。
一方、赤外線方式の場合、曇りや雨の日には正確なデータを取得することが難しく、作業を行うことが困難になります。しかし、外壁ロープ打診方法ならば曇りの日でも点検が可能であり、コスト面でも負担が少ないという魅力があります。
外壁ロープ打診調査の見積り依頼はこちらから
立面図や写真などは下記のメールアドレスにお送り下さい。
■東京事務所 TEL:03-6272-6985 メール : tokyo@taishin-jsda.jp
FAX:03-6272-6986
■大阪事務所 TEL:06-6444-2001 メール : osaka@taishin-jsda.jp
FAX:06-6444-2002
外壁ロープ打診調査報告書の内容
- ・調査概要
- ・損傷立面図
- ・代表的な損傷写真
- ・調査状況写真
- ・損傷数量表(オプション)
ロープ高所作業における危険の防止の為の規定(平成28年1月1日施工 )
ロープ高所作業では、準備中を含む作業中にロープが外れてしまい、作業員が墜落するなど度々災害事故が起きています。
そのため平成28年1月1日に「ロープ高所作業」での危険防止のため労働安全衛生規則が改正されました。
労働安全衛則第539条の2及び3の内容
ライフラインの設置(安衛則第539条の2)について
ロープ高所作業では、身体保持器具を取り付けた「メインロープ」以外に、安全帯を取り付けるための「ライフライン」を設けます。
ライフラインとは、墜落防止用の器具を指しており、リトラクター型墜落阻止器具を用いることも可能です。リトラクター型墜落阻止器具とは、緊急時にロックさせたりする巻取装置です。安全ブロックやセーフティブロックとも呼ばれ、作業者の墜落を防止するために使用します。
万が一、作業中にバランスを崩し落下しそうになるとワイヤロープやベルトにロックがかかり、作業員が落下するのを防ぎ、事故を未然に防いでくれるでしょう。落下事故を未然に防ぐだけでなく、衝撃を軽減し作業員の体にかかる負荷を軽減します。
メインロープ等の強度等(安衛則第539条の3)について
メインロープ等※は十分な強度があり、著しい損傷、摩耗、変形や腐食がないものを使用する必要があります。※メインロープとは、メインロープ、ライフライン、これらを支持物に堅結するための堅結具、身体保持器具とこれをメインロープに取り付けるための接続器具のことです。
身体保持器具については、下の写真の様な装備が必要になります。また、作業指揮者・作業員だけでなく、複数人によって確認しなければなりません。メインロープ及びライフラインは、作業を行う上方にある堅固な支持物と確実に緊結し、作業中に外れないようにします。高所作業員が作業する場所まで、安全に昇降するための十分な長さを有したメインロープと、ライフラインの用意が必要です。
堅固な支持物がある場所でも、突起物やメインロープなどが切断するおそれのある個所があれば切断防止の措置を行います。身体保持器具は、メインロープに適合したものを用いて接続器具で確実に取りつけなければいけません。
ロープ高所作業での装備