ドローンによる建物の外壁調査
ドローンによる外壁調査は、建築物の外壁調査における新たな選択肢として注目を集めています。コスト、時間、安全性の面での優れた効率性から、12条点検や大規模修繕、積算などの様々な調査で利用されています。その理由として、赤外線カメラを装備したドローンによる調査が、2022年4月1日から正式に定期調査報告制度の一部として認められたことが挙げられます。
以下では、このドローンによる外壁調査の方法について、その利点と欠点を含めて詳しく説明します。
ドローンを活用した劣化調査・点検
特定の建築物に対する定期調査で異常が見つかった場合、または施工後10年以上経過した建造物、外壁改修後10年以上経過した建造物、そして外壁の全面打診等の調査を実施してから10年以上経過した建造物に対して、外壁調査が必要とされます。外壁の劣化により、外壁が落下する危険性があり、最悪の場合、通行人がタイルやモルタルに直撃されて死傷する可能性もあります。
しかし、外壁調査はコストと時間がかかる作業です。
ここで注目されているのが、ドローンによる赤外線調査です。これは、赤外線カメラを装備したドローンを飛ばし、近距離からの撮影とデータ収集を通じて温度差分布を算出し、外壁の浮きを検出する方法です。この方法なら、外壁調査のために足場を組むなどの手間が省けます。
例えば、目視では異常が見つからない外壁に対して、このドローンによる外壁調査を行ってみましょう。赤外線カメラで撮影すると、赤色に変色した高温の箇所が見つかるかもしれません。これは、外壁が浮いている箇所で、タイルやモルタルの隙間の空気が温まっていることを示しています。
足場がない場所でも調査・点検が可能に
これまでは高所作業車やゴンドラ、ロープアクセス等でしか確認することができなかった箇所の劣化、損傷をドローンを使用する事で調査・点検する事が可能となります。
その結果、ビル等の所有者様にはリアルタイムで可視画像、赤外線画像または動画にて状況を確認して頂く事も可能となっております。
当協会では外壁打診調査や赤外線カメラを用いた外壁調査を数多くこなしてきました実績とドローンを活用する事でこれまでにも増して調査精度を上げる事が可能となり、より詳細な報告書をご提供させて頂けるものとなっております。
また現地での調査はある程度の規模の範囲ですと1日で撮影が可能となる為、所有者様や居住者様へのストレスがかからずに調査〜報告書まで実施させて頂けると考えております。
こちらの画像ではゴルフ練習場の鉄塔の錆の劣化状況、ボルトの締まり具合の確認ができます。
外壁タイル・モルタル面の浮きと思われる箇所をドローン×赤外線カメラで調査
(補修による注入跡が確認できます)
外壁面の浮きと思われる箇所を調査する場合、打診法以外に赤外線カメラを使用します。通常、当協会で行っております赤外線調査の場合、地上から撮影していきます。ただし周りに建物が隣接している場合や樹木等の障害物で許容範囲と言われている45℃以内に角度が収まらない事があります。
そういった場合、理想の位置までドローンを飛ばし撮影する事で調査精度を上げる事ができます。
赤外線カメラにて外壁面(タイル・モルタル)の浮きと思われる箇所の調査を行う場合は「晴れもしくは晴れ時々曇りの日」に撮影を行う必要があります。
外壁面に太陽光が照射する事でA,B,Cに発生した浮き箇所(剥離部)が高温になる事で周りの健全部との表面温度に差が生じます。(Cの浮きは広範囲で浮いているという事はなく、数枚の浮きとなりますが浮きしろが殆どなく、温度差に違いが出ません。)
当該原理を利用し、浮き箇所の調査を行っていきます。
但し、剥離部の浮きしろは1mm以上の浮きや0.1mmの浮き等様々ですが、僅かな浮きでは、表面の温度に差が出ない事が多々あります。
よって赤外線で温度差が生じる浮きはある程度の浮きしろがある場合の浮きという事になります。
漏水箇所を赤外線カメラで調査
赤外線カメラにて漏水の調査を行う場合は、雨が降った翌日等の壁面内は雨水が侵入している事で周りの健全部と比べ低温となります。漏水の根源となる箇所には特に温度が低い箇所となり、その様な箇所を重点的に調べる調査となります。
広範囲を非接触で行うことができる為、初動の一次調査といった位置付けとなります。
ドローン以外の従来の外壁調査の方法
外壁(タイルやモルタルなど)の調査方法には、「目視及び部分打診調査」と「全面打診等調査」の二つがあります。目視調査はその名の通り、肉眼による調査で、場合によっては双眼鏡を使用します。
一方、打診調査は足場を組んだり、ロープアクセスを利用したり、高所作業車やゴンドラを使うなど、調査箇所によっては大規模な作業となることもあります。手の届く範囲であれば、打診用ハンマーで表面を叩き、打撃音からタイルやモルタルの浮きや剥離を見つけ出します。
また、従来の外壁調査方法としては、赤外線調査も行われます。赤外線カメラで外壁を撮影し、そのデータを基に外壁の浮きなどを検出します。ただし、地上から撮影するため調査箇所との距離があるため、精度には限りがあります。そのため、打診調査と併用して行われることが多いです。
ドローンによる外壁調査のメリット
近年、ドローンによる外壁調査が注目を集めている理由は、従来の調査方法と比較して、多くのメリットがあるからです。ここでは、そのメリットを詳しく紹介します。ぜひ、外壁調査の際の参考にしてください。
人工を減らすことができる
建築の現場における人工(にんく)とは、外壁調査をはじめとした建設業など、見積の作成時に必要とする労働費の単位です。
例えば、ある外壁調査では労働力として3人/1日、作業員を必要とすることを仮定します。1日3人の作業員を必要とするのであれば、3人工というようになるのです。
ドローンによる赤外線調査では、この人工、つまり人件費の削減につながります。なぜなら、ドローンを飛行させ赤外線で外壁を撮影し、サーモグラフィの分析ができる最低限の人員さえ揃えられればいいからです。
足場がない場所でも調査・点検できる
ドローンによる赤外線外壁調査は、足場がない場所でも調査や点検が可能です。足場を組むのは時間がかかるだけでなく、調査対象の箇所によっては設置が難しい場合もあります。
しかし、ドローンを使用すれば、足場を組む必要がなく、ただドローンを飛ばすだけで外壁調査が可能になります。これにより、足場設置が難しい場所でも、短期間かつ低コストで外壁調査を行うことができます。
調査コストと時間を削減できる
ドローンによる赤外線調査は、調査にかかるコストと時間を大幅に削減できます。従来の打診調査では、調査開始から完了までに1ヶ月以上を要することも少なくありませんでした。足場の設置やゴンドラの利用、作業員による手作業などには時間がかかり、資材費や人件費といったコストもかさみます。
しかし、ドローンによる赤外線外壁調査は、ドローンを飛ばして赤外線で撮影するだけの調査なので、必要最低限の時間と費用で調査が可能です。これは、調査を依頼する建築物の所有者だけでなく、調査を依頼される調査業者にとっても大きなメリットとなります。
可視化データを取得できる
赤外線カメラのサーモグラフィデータは、外壁のどの部分が高温になっているか、あるいは低温になっているかを視覚的に把握できる形でデータ化します。これに対して、従来の打診調査は調査員が音を聞き分けるという感覚的なもので、データを視覚化することは難しいです。視覚化されたデータを得られるという点は、調査後の建物の維持管理にも大いに役立つというメリットがあります。
入居者の負担を軽減できる
ドローンによる赤外線外壁調査は、入居者への影響を最小限に抑えることが可能です。足場を組むと、ベランダでの洗濯物干し等、入居者の生活に影響を及ぼす可能性があります。しかし、ドローンによる赤外線外壁調査なら、足場を組む必要がないため、入居者の生活への影響を軽減できます。
ドローンによる外壁調査のデメリット
ドローンによる赤外線外壁調査のメリットが近年高く評価されていますが、当然ながらデメリットも存在します。ここでは、そのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
法律や条例などの制限によっては飛行できない
小型無人機等飛行禁止法により、ドローン(100g以上)の飛行が制限されているエリアが存在します。例えば、国会議事堂や原子力発電所など、国が重要と位置づける施設が該当します。そのため、建物の立地によっては、ドローンによる赤外線外壁調査が有用であっても、従来の打診調査を行う必要がある場合もあります。
また、航空法による制限も存在します。航空法では、人口集中地域や空港周辺、地表面から150m以上の高さでドローンを飛行させるには、事前に申請して許可を得る必要があります。ちなみに、地上150mはおおよそ40階建ての建物に相当します。
周辺環境によっては飛行できない
人口集中地域では、国土交通大臣の許可を得なければドローンの飛行は許可されません。許可を得るための申請を行い、許可が下りればドローンを飛ばすことは可能ですが、その際には目視できる範囲内での飛行という制限があります。そのため、建物の正面は調査できても、側面や背面は調査できないという状況が生じることもあります。
この問題は個別申請により解決できますが、さらに、建物、人、車両から30m未満の場所でドローンを飛行させる場合には、それぞれについて個別に申請を行う必要があります。
悪天候では調査・点検ができない
ドローンによる赤外線外壁調査は、ドローンの飛行と赤外線調査の二つの観点から、悪天候では調査や点検が行えません。まず、悪天候時にはドローンの飛行が困難となる点が挙げられます。例えば、雨が降っていたり、強風が吹いていたりするときには、ドローンを適切にコントロールすることができません。
そのため、悪天候の日に調査を予定していた場合、スケジュールを再調整して実施する必要が生じることもあります。
暑い・寒いときにデータを取得できない
次に、赤外線による外壁調査では、温度変化を利用して浮きを発見します。そのため、温度変化がない環境、例えば日の当たらない壁面では、赤外線を使用してもサーモグラフィで高温箇所が浮かび上がらず、期待する結果を得ることができません。そのため、壁面への日当たりや気温を考慮して調査日を設定する必要があります。場合によっては、調査を一度見送り、別の日に設定することも考慮するべきでしょう。
お問い合わせ〜報告書ご提出まで
- お電話、メール等でのお問い合わせ
- 必要な場合は現地を確認させて頂きます。また、調査内容により調査方法(赤外線カメラが必要か等)を選定させて頂きます。
- 調査方法、撮影範囲が決定しましたらお見積書を作成させて頂きます。図面もご提供頂きます。
- 現場~報告書のご提出までのお打ち合わせ及び計画を致します。
- 安全第一に調査を行います。
- 報告書をデータ、ファイル綴じしお渡しさせて頂き業務完了となります。