防災|災害時避難所のホテル、旅館も耐震助成へ(兵庫県)
神戸新聞NEXTの記事【平成28年1月20日(水)】より
ホテルや旅館など多くの人が利用する建築物(多数利用建築物)について、兵庫県は耐震化支援制度を2016年度から拡充し、延べ床面積がおおむね2000平方メートル以上の中規模建築物に対し、災害時の避難所としての活用を前提に補強設計費や改修費を助成する方針を固めた。同1000平方メートル以上の小規模建築物に対しては、耐震診断費用を補助するという。
同5000平方メートル以上の大規模多数利用建築物は、国が13年に耐震診断を義務付け、補強設計や改修工事に補助が出る。兵庫県内では中規模建築物に耐震診断費の補助制度はあるが、改修などに助成はなかった。
兵庫県によると、1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で建てられた中規模建築物は県内に約240棟。そのうち災害時に避難者を長期間受け入れられるホテルや旅館などは約50棟ある。新たな助成は、避難所としての活用について県や市町と協定を結んでいることを条件とするという。
また、旧耐震基準の小規模建築物は兵庫県内に約2300棟あり、耐震診断費用の補助制度を設ける。いずれも事業は市町が実施し、兵庫県は市町に助成する。このほか、大規模建築物を対象とした耐震化への県の融資制度も拡充するという。
兵庫県内の多数利用建築物の耐震化率は15年度で86・6%。兵庫県は15年度中に目標(25年度)を97%に設定する方針で、兵庫県建築指導課は「災害時の被害軽減のためには、住宅だけでなく多数の人が利用する施設の耐震化も欠かせない」としている。(斉藤正志)
近畿エリア 地域別・備えておくべき噴火と大地震の危険地図より
著者 木村政昭(東京大学理学系大学院博士課程修了 理学博士)
【2015年9月15日発行】
阪神淡路大震災以後、近畿地方では地殻の目立った変動はなく、当分は穏やかと見る向きもあるが、実は地震の危険をはらんだ一帯という認識を持っておいたほうがいい。といっても、よく耳にするであろう東南海地震や南海地震のことではない。警戒すべきは、近畿地方のど真ん中を走っている断層だ。日本列島の断層というと、糸魚川と静岡の間を南北に走るフォッサマグナが有名だ。
フォッサマグナは南北に走る地震地帯と考えられるが、ほかに日本列島には東西に走る断層がある。富山から岐阜県北部、琵琶湖、淀川、淡路島を結ぶ断層であり、四国の中央構造線とつながった先は吉野川沿いを走り、九州の別府から雲仙普賢岳に至る。私はこの断層を「日本列島大断層」とも「日本列島断層」とも呼んでいる。
日本列島の東西を走る日本列島断層では、地震が生じやすい。阪神淡路大震災からして、この断層上で起きているのだ。近年の地震でいえば、2014年の長野県神城断層地震も、日本列島断層に近い場所で起きている。
近畿の京都や大阪、兵庫県、神戸市といった大都市は、日本列島断層近くにあるわけで、この断層が割れると、大地震の被害に遭いやすい。その意味で、関西は地震への注意を怠ってはならない地域なのだ。
第19回「震災対策技術展」パシフィコ横浜
2015年2月5日~6日 10:00~17:00
のセミナーにて講演をさせて頂きました。
【セミナーでの講演内容がビル新聞の3月2日号に掲載されました。下記は掲載記事です】
(一財)日本耐震診断協会(藤原君夫代表)は、2月5・6日にパシフィコ横浜で開かれた第19回震災対策技術展でセミナ ーを出講し、耐震診断補助金制度ろ建物・立地条件やオーナーの要望別改修工法を紹介した。
最初に高橋寛行顧問(民間耐震事業担当)は、「平成25年に国土交通省が改正耐震改修促進法を施工し、一般建築物 の耐震診断が義務化され、東京都では石原都政で耐震診断を100%助成する都条例が制度設計され、3年でかなり浸透 した。」同協会でも40件耐震診断を実施。その事例から問題を2例挙げた。1例は隣接建物と30センチしか隙間のない 延べ250平方メートルのSRC造10階建て共同住宅で、騒音・振動問題など施行環境は悪いが、耐震補強工事が必要とい う例。工費が4億8000万円かかり、助成金1億8000万円を利用しても、自費3億円が捻出できない。改築の場合、既存 階より低い6階建てにしなくてはならず、家賃収入が激減する。耐震補強なら4万8700円/平方メートル、免震工法な ら8万2300円/平方メートル補助金が下りる。耐震なら10カ所で済むが、免震なら20カ所装置が必要というもの。経 費としてはほぼ同額。もう1例は、平成26年度から耐震補強工事に国からの83.3%の補助金制度が追加され、地方自治 体からも助成金16.7%下りる。耐震診断を受け、耐震化しようとしたところ、厚生労働省管轄のバリアーフリー法違反 が発覚。エレベーターの改修指示を受ける等縦割り行政の弊害、煩雑な提出書類が多く、3月末までの工期で、9月 25日に出した申請書が12月2日になっても確認が下りず、制度決定後の後戻りも出来ず、最終的に承認は下りたものの 、オーナーの耐震診断への不信感を増幅する結果となった。国土強靭化計画を推進するのは政府や地方自治体だけでな く、建物の所有者らが情報を入手し、所有建物と入居者の安全を自分で守る姿勢が大切と強調した。
最後に同協会の村上夏樹(株)コンステック制震事業部長が、耐震改修工事の重要項目と発注者ニーズに応えた耐震補 強7工法の違いを説明した。入居・執務しながら工事できる①サイド・ポ・スト工法:共用廊下やバルコニーに組立鉄 筋を建て特殊ポリマーセメントモルタルをコテ塗りし、袖壁付柱の増厚補強。外観・廊下幅に変化無し。②デザイン Uフレーム工法:バルコニーや壁面等建物外周にRC造フレームを増設。採光・眺望に変化なし③BiDフレーム工法: 粘弾性ダンパーを鉄骨フレームに内蔵、建物外周で既存建物と接続。採光・眺望に変化なし④安震ブロック工法: RMユニットを組積して耐震壁を増設・接着。工期短縮、省スペース施行。低振動・低騒音⑤3Q-Brace工法:内臓鉄 筋に引張り力と高強度モルタルに圧縮力のある分割した軽量鋼管でブレースを構築。工期短縮、省スペース施行。低振 動・低騒音⑥ニンピック工法:部分スリットの後施行で完全スリット並みの補強。室内工事なし。低振動・低騒音⑦ VESダンパー工法:S造に粘弾性体を用いた間柱型制振パネル(ユニット)を挟む。省スペース、効果大。
銀行業界誌 銀行実務10月号の特別企画
『改正耐震促進法が融資取引に与える影響』に寄稿
銀行業界誌である雑誌、銀行実務(発行:銀行研究者)の
平成25年10月号の特別企画『改正耐震促進法が融資取引に与える影響』
に寄稿しました。
(下記は銀行実務H25.10月号 57ページ掲載文より抜粋
尚、掲載文は国交省住宅局建築指導課の査閲済みです。)
4.融資取引に与える影響(1)耐震診断や改修に要する費用
耐震対策では、最初に建築物の耐震診断診断を行って耐震工事の
必要性と工事費用を積算した後、改めて耐震改修工事を契約し、
施行するのが一般的である。
鉄筋コンクリート造の耐震診断に要する費用の目安は、延べ床面積
が1000㎡~5000㎡で、意匠図・構造図がある場合は800円/㎡
~2000円/㎡程度である。延べ床面積5000㎡の建物の場合、
耐震診断だけで400万円~1000万円程度となる。・・・・
ビル経営の業界誌 週刊ビル経営3月25日号
『5000㎡以上の建築物 耐震診断の義務化』への寄稿
ビル経営の業界誌である週刊ビル経営の平成25年3月25日号、
「5000㎡以上の建築物 耐震診断の義務化」での取材により下記文を寄稿しました。
日本耐震診断協会はクライアントの立場に立ち、第三者的な観点にて建物の耐震診断
や維新補強設計、建築部の等の調査・診断などを日本全国で行っております。
東京都におきましては、緊急輸送道路遠藤建築物の耐震化を推進する条例が平成23年
4月に施工され、平成24年4月より耐震診断の実施義務が始まったこともあり、現在多くの
緊急輸送道路沿道の建物所有者様などから耐震診断実施のご依頼やご相談を承っております。
また、東京都以外の各行政区でも耐震診断や耐震補強設計の補助金制度と共に耐震診断を
実施した建築物の耐震改修工事費用の制度も年々整いつつあるのが現状と思われます。
ここにきまして新たに「建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律」
(改正耐震改修促進法)が平成25年11月に施工されるようです。
この改正では病院や店舗、旅館等の不特定多数の人が利用する建築物及び学校、老人ホーム
等の避難弱者が利用する建築物のうち大規模なものを中心に、昭和56年以前の旧耐震基準で
建てられた建築物について2015年末迄に耐震診断を義務付けるといった法改正の見通しです。
さらに、マンションを含む住宅や小規模建築物等についても、耐震診断及び必要に応じた
耐震改修の努力義務とされます。
ビル経営の業界誌 週刊ビル経営1月7日号
『耐震診断に関して』への寄稿
ビル経営の業界誌である週刊ビル経営の平成25年1月7日号、
「耐震診断に関して」での取材により下記文を寄稿しました。
平成24年4月に耐震診断の実施義務が開始された事もあり、耐震診断の
依頼が急速に増えています。ただ助成金を申請しても建物のオーナーが無職だと、
助成金が認定されなかった事例を効く他、耐震診断を行う上で欠かせない建物の
図面を紛失してしまっている場合は耐震診断の現地調査項目が増え、その為の別途
費用がかかってしまうため、助成金の範囲内では収まらず耐震診断を見送ると言う
ケースもあります。
そう言った理由もあり耐震診断の実施に踏み切れない方々も多く
おられる事も事実です。また耐震診断の主な対象建物が昭和56年以前に建てられた建物
であるため、耐震診断の実施依頼者である建物の所有者の方々の中には建物の転売が
繰り返されて図面が手元に無いと言うことや、図面の痛みが激しくて読み取れないと
言ったケースも多く見受けられます。
特に構造図面を紛失している場合、建物の構造や
規模にもよりますが、建物の構造図面を復元させる為、一般的には各フロア毎に壁や
柱のコンクリートをハツって内部にある鉄筋等を露出させ、鉄筋の直径や腐植度を調査
しなければならないので通常より1~2週間程度多くの現地調査日数を要する事もあり、
また耐震診断に要する費用面においても図面がある場合と比較して1.5倍~2.5倍程度の
現地調査費用がかかってしまいます。
耐震診断の助成金はこのような場合の図面を復元
させるための費用は含まれていないので、構造図面の無い建物の耐震診断の実施時には
例えば金融機関が低利にて融資を行うと言った対策などが今後必要になってくるのでは
ないでしょうか。
なお、東京以外の市区町村においても民間の建築物を対象に耐震診断の助成金制度の
予算が組まれていますが、1年に2棟のマンションの耐震診断を実施すると助成金の
年間予算を費やしてしまうと言う行政もあり、巨大地震の発生確率が高いと言われて
いる地域においても耐震診断の助成金制度が充実され、耐震診断の実施率が飛躍的に
向上するといった状況はまだまだ先の事と思われます。
建設工業調査会発行ベース設計資料 建築編
『これからの耐震診断の必要性・耐震診断の実施内容と評価方法』に寄稿
建設工業調査会発行のベース設計資料(平成24年12月20日発行)に、
これからの耐震診断の必要性ー耐震診断の実施内容と評価方法-
に於きまして日本耐震診断協会のホームページの内容が掲載されると共に、
これからの耐震診断の必要性と言うテーマで下記の文を寄稿しました。
これからの耐震診断の必要性
これまでそして現在の耐震診断は、主に新耐震基準以前の建物を
対象としている。これは社会に新耐震以降なら大丈夫といった安
易な線引きを与えることにもなりかねない。
確かに阪神淡路地震では、新耐震基準以降に建設された建物に大
きな被害がなく、その有効性が実証された反面、新耐震基準以降
に建てられた建物でも局部的な破壊や施工不良などによる弊害
(被害)も散見された。
事実、阪神淡路地震で露呈した弱点をカバーするように設計基準
の改定が行われた。このように設計基準は常に地震などの災害後に改定が繰り返され
現在に至っている。
地震動と建物の振動性状は、その建物自体の特性や地盤状況で異なり千差万別と言える。
たとえ同じ基準で設計しても、設計者や工事業者による違い、経済的時代背景などが
耐震性能や劣化状況に影響を与えている。そして耐震偽装事件で明かされた審査機関の
チェックの限界や設計者のヒューマンエラーなども考えると、(現在は厳しいチェック
体系となっている)ただ単に新耐震基準以降だから大丈夫と言い切れない面がある。
また新耐震基準施行時から既に30年以上が経過しており、新耐震基準で建てられた建物
でも劣化の進行も懸念される。
さらに東日本大震災以降。今後の地震予想が脅威を増していることや、長周期地震動の
問題など、予断を許さない状況が来ている。
これからの人口減少、高齢化時代に今までの建築ストックを生かしつつ健全な社会空間、
居住空間などを造っていくには、旧耐震基準で建てられた建物にも拘わらず、存在する
建物の耐震能力や劣化状況を把握する事が重要であり、長期的視野で建物の利用を判断
する際、耐震診断が大いに役立つものと考える。
なお、一般財団法人日本耐震診断協会では正式な耐震診断とは別に、その前段階として
建物の大まかな耐震性能や耐震傾向をレポートする業務(一般図・構造図有りに限る)
も有償ではあるが行っており、その結果を耐震診断の要否も含め修繕計画策定に役立てる
こともできる。
有馬温泉 有名老舗旅館の耐震診断と建物再生プロジェクト
日本耐震診断協会では兵庫県北区有馬に古くから営業をしている某有名老舗旅館様より
耐震診断のご依頼を受けました。耐震診断の結果を踏まえて老朽化している建物や内装・
設備・サービスを総合的な観点より見つめなおし、改善し、お客様に宿泊やお食事・
サービスを通じてより一層の満足感、充実感を味わって頂ける、そのような老舗旅館再生
プロジェクトに取り組んでおります。
耐震診断の現地調査のひとつである比較的大きな音の出る作業、コンクリートのコア抜き
業務(32箇所)もお客様がチェックアウトされる午前10時から午後3時頃までの時間に
実施しました。平成25年9月末に出る耐震診断の結果後の進展もまたこのホームページで
お伝えして行きたいと思っています。(平成25年9月9日)